ATR（Average True Range）は、外国為替（FX）の市場で使用されるテクニカル指標の一つで、価格の変動性を測定するために用いられます。ATRは特に、リスク管理やポジションサイズの決定を行う際のツールの一つとして利用されます。
ATRとは？
ATRは、「Average True Range（平均真の範囲）」の略で、J. Welles Wilderによって開発された指標です。ATRは、価格の変動幅を測定し、市場のボラティリティ（価格の変動率）を視覚化します。この指標は、どれだけ価格が激しく動いているか、または価格がどれだけ安定しているかを示すため、トレーダーがリスクを管理するために利用します。
1.1 True Range（真の範囲）
ATRを計算するためには、まず「True Range（真の範囲）」を求める必要があります。True Rangeは以下の3つの値のうち最大値を選びます。
- 現在の高値 – 現在の安値
- 現在の高値 – 前日の終値
- 現在の安値 – 前日の終値
これにより、価格の動きが前日終値を超えてどれだけ広がっているのか、またはどれだけ狭まっているのかを測定できます。例えば、大きな価格ギャップがあった場合、True Rangeは大きくなります。これにより、ボラティリティが高い市場を認識できるのです。
ATRの用途
ATRは主に以下のような用途で使用されます。
2.1 ボラティリティの把握
ATRは、価格の動きの大きさを示す指標であり、ボラティリティを把握するために利用されます。例えば、ATRが高い場合、市場は高いボラティリティを持っており、価格が大きく動いていることを示します。反対に、ATRが低い場合は市場のボラティリティが低く、価格の動きが比較的小さいことを示します。
2.2 トレード戦略の一部として
ATRは単独で使用されることもありますが、一般的には他のテクニカル指標と併用して戦略を立てるために利用されます。例えば、ATRを用いて以下のような戦略を組み合わせることができます。
- ストップロスの設定：ATRを利用して、トレードのストップロスを設定する際に、過去のボラティリティに基づいて動的なストップロスを設定します。例えば、ATRが高い時期には広いストップロスを設定し、ATRが低い時期には狭いストップロスを設定することができます。
- ポジションサイズの調整：ATRを使って、市場のボラティリティに応じてポジションサイズを調整することができます。ボラティリティが高いときにはリスクを抑えるために小さなポジションを取ることができますし、ボラティリティが低いときにはより大きなポジションを取ることが可能です。
2.3 リスク管理
ATRはリスク管理のツールとして有用です。ATRを参考にして、どれだけのリスクを取るべきかを判断します。ATRが高いときは、大きな価格変動が予測されるため、リスクを抑えるために小さなロットで取引を行うことが望ましいです。逆に、ATRが低い場合、リスクを取る余地があるため、より大きなロットを取ることができます。
MT4でのATRの使い方
ATRはMT4に標準的に搭載されている指標の一つです。MT4でATRを使用する方法を以下に示します。
3.1 ATRのインジケーターをチャートに追加
- MT4を開き、取引画面に移動します。
- 上部メニューから「挿入」→「インジケーター」→「オシレーター」→「ATR」を選択します。
- ATRの設定画面が表示されます。通常、期間を14に設定しますが、必要に応じて期間を変更することも可能です。
- 「OK」をクリックしてATRをチャートに表示します。
これでATRがチャートに表示され、現在の市場のボラティリティを簡単に確認することができます。
3.2 ATRを利用したトレードの実例
ATRを用いたトレード戦略の一例として、以下の方法があります。
- ストップロスの設定：ATRの値に基づいてストップロスを設定します。例えば、現在のATRが50ピップスであれば、ストップロスをその2倍の100ピップスに設定し、トレードのリスクを管理を行います。
- トレーリングストップ：ATRを使ってトレーリングストップを設定し、市場のボラティリティに応じてストップロスを動かすことができます。例えば、ATRが50ピップスの時に、トレーリングストップを50ピップスごとに移動させます。
ATRの限界と注意点
ATRは市場のボラティリティを測定する優れたツールですが、いくつかの限界があります。ATRは価格の変動幅を示す指標であるため、トレンドの方向性を示すものではありません。つまり、ATRが高いからといって必ずしも価格が上昇または下降しているわけではなく、単に価格の動きが大きいことを示しているだけです。
また、ATRは過去のデータに基づいて計算されるため、未来の市場の動きを予測するものではありません。したがって、ATRを使用する際には他のテクニカル指標や市場の状況も考慮することが重要です。
まとめ
ATRはリスク管理やボラティリティの把握に役立ちます。しかし、ATRを単独で使用するのではなく、他のテクニカル指標と併用することが推奨されます。
